起業の選択肢にNPOはどうですか?

NPOは非営利団体であり、「世のため人のため」に活動します

事業をどう始めるか(5) 事業体の選択

事業をどう始めるか(5) 事業体の選択

事業体の選択

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事業を立ち上げて推進していくため、その事業体がどのようなものであるのか、法人格をどうするのかということを整理しておきましょう。

法人格がないと、日本の社会システムの中では事業を行うことができないといってよいのです。

確かに個人事業主や任意団体という形もありますが、それでは社会的信用は得られません。

その人が病気になったり事故に遭ったりすると契約の続行が困難になるわけで、そうして不安定な対象は通常契約の相手にはしないのです。

法人であれば、個人の責任ではありませんので法人=組織としての責任で商品やサービスの安定的な提供を期待できることになるわけです。

この法人格をどのようにするかによって、企業の仕方が随分違ってきます。

法人格を何にするかを具体的に決める前に、事業体の性格をイメージしておくことです。

(1)参加型の事業体にする

事業内容やその展開について、あらかじめ主要なメンバーがおり、その参加と合議による事業体を作ります。

この場合には、非営利事業体を選択することになるでしょう。

ワーカーズ・コレクティブ(生産者協同組合)のように参加者も出資も働き手にもなって、資本と労働を分離しない方法もあります。

この方式を選択した場合の法人格としては、NPO法人、財団法人、社団法人、生活協同組合、農業協同組合、労働組合などがありますが、NPO法人以外は設立に制約が多いので、現実の選択肢には入らないでしょう。

(2)資本中心型の事業体にする

これは営利法人による事業体で、法人格では有限会社や株式会社になります。

この場合には多くの資本金を提供する人に権限があり、その人の意向に賛成する出資者と雇用した人によって事業を行います。

(1)は、事業の中核に参加者の意向を反映できますので、様々な知恵を組み合わせて、それぞれが持っているネットワークを活用して事業を行うことができます。

また、非営利事業体として起業する場合には、企画によってボランティアの参加・協力を得ることもできます。

弱点は、決定のための合議が必要であるため、また、それぞれが持っている夢の実現していくことを運営の中で配慮するために意思決定までの時間がかかること、大きな資本を集めるのが困難なことがあります。

これに対して(2)は、企画内容、または中心人物の信用力によっては大きな資本を集めることができ、また資本構成次第では意思決定が簡単(株を51%以上持っていれば何でもできる)であるという特徴を持っています。

ところが、いくら良い企業理念をもって取り組むとしても、営利事業体である場合はボランティアの協力や参加を得ることはできません。

以上の特徴を押さえ、どのような性格の事業体にするのかを選択することです。

どちらの方が絶対に良いということはありません。

起業しようとする人の好みの問題といってよいでしょう。

タイプ

参加型

資本中心型

法人格などの名称 任意団体(ボランティア団体) NPO法人 株式会社有限会社
第一義目的 社会的利益(世のため人のため)の追求 利益(儲け)の追求
利益 追求しない 従たる目的として追求し、本来事業へ環流させる。私的な分配はできない 主たる目的として追求し、株主等に分配する
設立方法 法的な手続きは不要 法人格の取得(認証) 法人格の取得(届出)
設立費用 不要 不要 登記手数料など17万円以上必要
資金 参加者の会費・寄付・事業収益※資本金は不要 参加者の会費・寄付・借入金・事業収益・助成金※資本金は不要 資本金・融資・事業収益
人材 会員は1人でも可。役員はいなくてもよい 会員は10人以上。役員は理事3人以上・監事は1人以上必要 (有)は取締役1人以上・監査役任意、(株)は取締役3人以上・監査役1人以上※労働の対価として給料を支払うため、人材は集めやすい。ただし、ボランティアは活用できない。
※企画によっては無償・有償のボランティアの協力を得られる。ただし、謝礼の有無にかかわらず、協力者のモチベーションを維持ずる仕掛けが必要
運営方針の決定 中核メンバーの合議 役員など中核メンバーの合議※ボランティア団体より組織的。合議制のため営利事業体より決定に時間を要するが、多くのメンバーの意思が反映されやすい 株主の意思※資本金の出資が多い者ほど決定権が大きい。被雇用者にはほとんど決定権がない
自治体や企業、労働組合との契約 基本的に難しい 可能。自治体、労働組合との関係性は営利事業体をしのぐ 可能
課税 原理としては個人事業主扱いでの課税。会費等についてはみなし法人扱いとして非課税 会費、寄付については非課税※認定NPOの場合には寄付金の優遇制度がある 全ての事業に対して課税
情報公開制度 対象外 3年分の事業報告書などの閲覧 (有)なし。(株)貸借対照表のみ表示
ワーカーズ・コレクティブは、NPO法人として活動している場合も多いが、任意団体、企業組合、生協法人などの場合もある。

企業とNPO

まず、企業とNPO法人とはどのように違うのでしょうか。

NPO法人には企業と異なるミッション(社会的使命)があって、これによって無償のボランティア、あるいは金額が低い労働力による協力を得ることができることです。

企業はお金の価値を軸に動きますが、NPO法人はミッションを軸にして事業を進める点が異なるのです。

NPO法人は、主たる事業の『特定非営利活動』を広げていくための『従たる事業』として収益事業を実施できます。

ただし、単なるボランティア弾台ではないので、職員に企業並みの賃金を払ってもいいし、剰余金(利益)を上げてもよいわけです。

ただ、その利益は株式会社の株主配当などのように私的な配分をしてはならないということです。

また、NPO法人を解散する場合の残余財産を私的に配分することもできません。

寄付先を定款に明記していない場合には、国や自治体の資産となり、明記されている場合もその対象はNPO法人、公的法人、自治体などでなければなりません。

そして、事業の結果として得られた利益は、企業の場合はボーナスなどに配分してもよいのですが、NPO法人ではミッションのために活用しなければなりません。

しかし、NPO法人はビジネスと全く関係ない世界にあるのではありません。

何をするにもお金は必要であり、NPO法人が活動するためのお金が必要になるわけです。

この意味ではNPO法人は単なるボランティア活動を意味するのではなく、それに事業性・収益性を追加したものなのです。

ですからNPO法第5条でわざわざ『その他事業』という項目が立てられ、企業のように収益事業を展開しても差し支えないと明記されています。

では、NPO法人としての事業を成立させようとすれば、どのようにすればよいのでしょうか。

  1. NPO法人が企業に対して優位な立場を確保できる構造は、無償ボランティア、低廉な謝礼金(有償ボランティア)によって、優秀な人々の協力を得ることができること
  2. このことが可能になるのは、NPO法人が私的利益のためではなく、ミッション(社会的使命)の実現のために働く機関だからである。したがってミッションの意義が明確であり、多くに人々に支持される者でなければならない
  3. NPO法人は、ミッションに基づく人間らしい熱い心と、企業と同じく利益を確保できるためのクールな合理性の両立を図らなければならない

以上を理解した上で展開する時、NPO法人の事業化は成功するのです。

ボランティア団体との相違

NPO法人とボランティア団体との相違についても整理しておきましょう。

NPO法人をボランティア団体と同じ捉え方をしている人が多いですが、このような考え方ではNPO法人として事業を成立させ、成功させることはできません。

どちらも非営利の活動によって『世のため人のため』に汗を流している共通点があります。

その一方、最大の相違点はNPO法人の場合、ボランティア活動に加えて『事業性』があるということです。

また、ボランティア団体の多くは任意団体であり法人格を持っていないのですが、NPO法人になるということは『特定非営利活動法人』という法人格を持つということです。

法人格が必要になってくるのは、団体としての事業性がボランティア団体よりも高まり、権利能力がある=契約ができる法人格が必要になるからです。

ボランティア活動は、自発性(自主性)・社会性(公益性)・無償性を骨格とした助け合いの活動で、社会一般でいう『事業』ではありません。

現実に目を向けてみますと、ボランティア団体の多くは規模も小さく、年間予算30万円までの団体も多く、事業体としての体制を持っているとはいえません。

角度を変えてみれば、独立した事務所や専任の職員を持っていないということです。

これに対して、NPO法人になれば、事業の継承について責任が持てる体制作りが前提になってくるわけです。

こうして比較すると、NPO法人はボランティア団体に事業性を付与して組織化したものといえるでしょう。

そして、給与を支払う職員がおり、自治体や企業との契約を実行できる体制を持っているということです。

働き方としてのボランティアの意味

ボランティアにはボランティアの論理があり、助け合いの気持ちや気持ちよく過ごせる地域社会を作るために必要な活動です。

生活のために働く以外の自由時間で、少しだけでもボランティア活動のために充てることは、個人の生活にとっても社会にとっても大変意義あることです。

こういう人は年々増えていく傾向にあります。

ですから、普通はボランティア精神のある人たちが集まって活動をしていくのですが、これをNPOビジネスのサイドからいえば、本質は曲げずに目的を達成できるよう連携する、ということでしょう。

人間の働き方というのは、もともと採集や狩猟の時代には『労働』『余暇』『スポーツ』が渾然一体となっていました。

そこからハイキングやスポーツ競技に変化していったのです。

また、働きに応じてお金を得られる方式だけでなく、家族の中における労働のようなアンペイド・ワーク(無報酬労働)があり、隣近所の助け合いなどが存在していたわけです。

今後の社会関係において求められるのは、働き方の多様性です。

これまでの賃金労働だけでは人間社会はギスギスしたものになってしまします。

ボランティアという対価を得ない働き方は、『全人間的な存在』をいびつな産業社会から取り返す意義を持っており、多くの人たちが参加する時代になっています。

この歴史的な流れから生まれるエネルギーを事業に組み入れることができるのがNPOビジネスなのです。


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